本当にサナダムシは刺身用サーモンから人体に感染するのか?

先週の”世界仰天ニュース”がすごい話題になってましたね!

皆さん見ましたか!? (…私は見てません)

聞いてみればこれは本当に仰天ニュースでした!

「サーモンの刺身を食べてサナダムシ(裂頭条虫)に感染してしまい、1mものサナダムシがお尻から出てきた」

というなんとも衝撃的なお話!!

Twitterでも大きく話題になっており….

ええええええええええ!!!!!!

なんとサーモンが食べられなくなった人が多発
( ;∀;)( ;∀;)( ;∀;)

このニュースには水産業界の面々もびっくり仰天!


それもそのはず、通常売られてい刺身用のサーモンからサナダムシに寄生するという話は

魚屋でも耳にしたことがないのだから…!!

これには”寝耳に水”ならぬ”寝耳にサナダムシ“である
(これはこれで気持ち悪い)

そもそもサナダムシとは….


(引用 https://ja.wikipedia.org/サナダムシ)

今回話題になったのは日本海裂頭条虫と呼ばれるサナダムシ

サケやマスの筋肉内に幼虫が寄生しているので、その成虫が真田紐のような形なのでこの名があるそうだ。

なんとこのサナダムシ、全長10mを超えるまでに成長することもあり、肛門から片節が出ることで初めて寄生に気づく人が多いとか。さらに各片節に雌雄の生殖器があるので、頭部を除去しない限り駆除は完全ではないとのこと…!!

どうして人間に寄生するかというと

卵から孵化

川でケンミジンコに食べられる
(第1中間宿主)

それを食べるサケ・マス類を中心した魚類に寄生
(第2中間宿主)

最終的にその魚を食べる人間に寄生する

とのことである。

「やっぱりサーモン生で食べると危ないじゃん….」

と思ったそこのあなた、ちょっと待って!

普段売られている刺身用のサーモンを食べて、サナダムシに感染する可能性がどれだけあるのか調べてみようじゃないか

刺身用サーモンについて

日本で売られている刺身用サーモンをざっくり分けるとこの2種類(生食用のサーモンは基本的に養殖です。)

①海外産養殖サーモン(9割以上はこれ!)
②国産養殖サーモン(残りはこっち!)

これの感染者データを調べれば、何かしらわかるはず!!

①海外産養殖サーモン

私たちが食べるサーモンの90%以上はこちらのサーモン。
中でもノルウェー産・チリ産のサーモンが有名ですよね。

海外にも”広節裂頭条虫”と呼ばれるサナダムシが存在するのですが、国立感染症研究所によると…

わが国ではノルウェーやチリ産の養殖サケ・マスが広く流通しているが, これらの輸入サケ・マスから広節裂頭条虫が検出された報告はない。

引用:わが国における条虫症の発生状況 – 厚生労働省-戸山研究庁舎

え、検出された報告はない、、、ってことは

何も問題ないじゃん…

てことはもしかすると国産養殖サーモンがヤバイのか…??

②国産養殖サーモン

まず国産養殖サーモンのうち淡水で育てられている養殖サーモンの状況を調べてみると、衝撃的な事実が…!!

今回調査した内水面養殖サケ科魚類2,187尾から裂頭条虫およびMetagonimus属吸虫のメタセルカリアは検出されなかった。引用:日本で内水面養殖されたサケ科魚類における日本海列島条虫プレロセルコイドおよびMetagonimus属吸虫メタセルカリアの寄生状況

「検出されなかった」って…あれ……???

全国養鱒振興協会の実態調査結果も…

国内の淡水で養殖されたサケ・マス類にはサナダムシはいません。冷凍の必要はなく、生で安心してご賞味いただけます。国産淡水養殖サケ・マス類からはまったく認められず生食の『安全性』が立証されました。
引用:全国養鱒振興協会

なんだ、淡水養殖サーモンは大丈夫なのか、

てことは問題は海面養殖….??

いやいや、ちょっと待って!

海面養殖は上記の淡水で育てた、いわば安全性が立証されたサーモンを海に輸送して大きく育てたもの!

感染していないサーモンを一時宿主であるケンミジンコが存在しない海で育てたところで、寄生される心配はないので、理論上国産の海面養殖サーモンも感染の可能性はかなり低い(ない?)

やはりサーモンは安心して食べれるじゃないか…..!!

ちなみに刺身用の養殖サーモンは寄生虫アニサキスの心配もございません!

刺身用サーモンに寄生虫アニサキスは絶対に存在しない!プロが真相を語る!

ってことは、この感染者は何を食べたんだ!?!?

大好きなサーモンの刺身を食べてサナダムシに感性し、
消費者に大きな不安と衝撃を与えた、本当の意味での世界仰天ニュース

一般的な刺身用のサーモンからの感染可能性はそもそもかなり低い(実質ゼロに近い)ことはわかった…

ではこの方が何を食べたのか

それは、、、

単純に、生食用ではない「天然の鮭」の刺身ではないだろうか…

確かに天然の鮭も-20度以下で凍らせるてルイベ加工すると、生食も可能なのですが、処理を謝ると感染のリスクがあります。

例えば家庭用の冷凍庫だと、サナダムシが死滅するにも時間がかかり、知らずに食べると感染のリスクも大きく高まります。サナダムシに感染された方がサーモンを食べたとされる和歌山県でも天然の鮭を刺身で出している店は確かに存在します。

なので一般的に売られているサーモンを食べて感染したのではなく、

本来寄生虫リスクがある(生食に適さない)天然の鮭を生食べていた

のではないでしょうか。

ということで、スーパーや一般的な回転寿司等で売られているサーモンに関しては理論上、安全と言い切っても良いのではないのだろうか。というのが私の個人的な見解です。

1歩進んで100歩下がる水産広報

小規模な経営体が多い水産業界、不慣れな中でもあの手この手で水産品のキャンペーンが行われています。

地域でさかなのお祭りをやったり、ブランドを作ったり、30日はサーモンの日キャンペーンをやったり…

どこも大小様々な取り組みを身を削って行ってはいるのですが、日本人の魚離れは顕著であり、なかなか身を結べない事業者は多いです。そんな中でもこういったマスメディアの影響により、一瞬で消費量が落ち込み、生産者や販売者が在庫を抱えて死にかける。みたいなことを目にすると、さすがにまぁまぁつらいっすね。

いや、つらいっすね!!

今、この放送を受けて日本テレビに抗議するといった話を、業界団体や魚屋の方から非常に多く頂いております。

※とはいえ限られた制作時間、放送時間内で視聴率を追いかけなければならないテレビ側の心理も分かる。勿論彼らも世間に誤認させたい訳ではない。

過剰なゼロリスクを求める消費者

刺身用の養殖サーモンは極めて安心で安全な食品であり、寄生虫のリスクはゼロと言っても過言ではありません。私としても水産物の中ではトップレベルの品質や管理基準を誇っていると思ってます。

それでも外のものを体内に入れる「食べるという行為」に対して、「体に一切影響がないのか!」「全く問題がないのか!」といった100%安全かという要求には答えることはできないのです。

そもそもリスクがゼロの食品など存在し得ない!

ゼロリスクは現実的でなく、社会的に許容できる限度までリスクを引き下げることが目標だと考えられるようになってきたわけです。この考え方を私たちはもっと理解していかないといけないということが1点かと思います。リスクをゼロにすることは、その原因である危害因子をゼロにすることになります。危害因子がゼロにできたら、リスクもゼロになる。しかし、危害因子がゼロにできるかといえば、ほとんどのものがゼロにできないのです。消費者庁-「食品と放射能について、知りたいこと、伝えたいこと」より抜粋

水も飲みすぎれば中毒を引き起こすものです。

何事もバランスよく摂取したいものですね。

銀杏を食べ過ぎて体調崩しガチな私が言えることでもないですが…笑

最後に

誰かがサーモンの知識をちゃんと伝えていかないと、この業界は間違いなく衰退してしまうのでは…

ということでサーモンの雑学や情報、豆知識を語り尽くすサーモン解体ショーの実施に向け、クラウドファンディングをしておりますので、ご支援いただければと死ぬほど嬉しいです!!(後3日で50万…泣)

返礼品には私が選ぶ豪華ブランドサーモンの利き鮭セットや、
マツコの知らない世界やNHKガッテンでも話題になった
オリジナルTシャツ(T-シャケ)をご用意しておりますので

覗いてもらえれば幸いです!

ということで、ここまで読んで頂いてありがとう御座いマス!!

サーモン中尾 (中尾 晋)