水産業の課題解決プログラムの運営を終えて、見えてきた4つのこと

早起きはサーモンの徳!サーモン中尾です!
(今日は4時起き)

「サーモン協会以外に何やってるんですか?」
と80%くらいの人に聞かれるので、今回はサーモン以外の話を…!!

現在全日本サーモン協会以外にも、一般社団法人RCFという団体に社会事業コーディネーターとして携わっており、昨年1年間は水産業と都市部の人材を結ぶ課題解決プログラム”OceanAcademy“を経済産業省に提案し、運営しておりました。

そもそも今所属する(一社)RCFへ入社したきっかけは、私の退職記事(大手水産商社を退職しました。古すぎた日本の水産業界)を見た当時のマネージャーより連絡を頂き、水産領域で東北復興の事業を作れないかと言われたこと!(だった気がする)

そこで立ち上げたのがこの“OceanAcademy”というプログラム

内容としては宮城県石巻市(いし”の”まきし)で、都市部の大企業を中心とした20~30代の人材と水産業の現場に伺い、彼らに水産現場の課題解決プロジェクトを立ち上げてもらおうというプログラムである。

対価として参加者が享受するのは金銭的な報酬ではなく、プロジェクト実施を通じた参加者自身の成長であり、多様な企業の参加者や地域の事業者と繋がるコミュニティである。

結果としては、当事業からいくつもの優秀なプロジェクトが生まれ、さらにプログラム終了後も、引き続き数名の参加者には地域の水産事業の変革にコミットして頂いている。

ということで、一年間私自身がこの事業を運営する上で感じたことが色々あったので、一部ここに書いていきます。

何か地域(特に水産業)や今後の働き方を考える上で参考になれば幸いです!

① お金を払って働く時代

Ocean Academyのプログラムは、前述の通り、参加者が自費で宮城県石巻市に出向き、石巻の水産事業者の抱える課題を自ら発見/設定し、東京に持ち帰り、自らプロジェクトチームを起こして解決するといったものだ。

そう、この事業は水産事業者の抱える課題を解決するために、参加者の相当のコミットを要するのだが

金銭的な報酬は一切なし!

…にも関わらず、毎週のようにチームで打ち合わせを行い、それぞれハイレベルなアウトプットを出して頂いた。むしろ東京から現地(宮城県石巻市)までの交通費/二泊三日の宿泊費も自己負担して頂いており、言わばお金を払って休日働いて貰ったのだ。

終わってみれば「これだけ頑張ったのだから、その分の対価を支払え!」なんて声は一切なく、有難いことに「参加してよかった」「成長に繋がった」「楽しかった」という声を沢山いただいた。アンケートでも8割以上の参加者が「同様のプログラムがあれば参加したい」との評価を頂いたのである。

創造的な仕事は面白い

度々話題に上がるオンラインサロンも「タダ働き!」だと未だに揶揄されているが、創造的な仕事、特に業界や地域を変革するような課題解決は、休日返上・無償で取り組めるほどに面白く、何より個人の成長にも大きく繋がるのである。(なぜお金を払ってるのに働いてるの?「オンラインサロン」に入るメリットを聞いた by 新R25編集部)

さらに言えば身銭を切ってまで、何か利他的に行動できる人は、そもそも優秀で面白い人が多く、自ずと良質なコミュニティが出来上がっていた。

創造性が生かされる機会は、大企業ほど少ない

参加者から頂いたアンケートでも「今の大企業の仕事は分業が進んでおり、創造的な仕事は殆どない」といった声が多く、特に若手に裁量がないことは、元々大企業で働いていた自分としても、すごくよくわかる。

「新しいことをやれ!前例にとらわれるな!」
と言われながら、関係者全員の承認を得た後は、どれだけ尖ったプロジェクトも最後には必ず丸くなる。
そもそも全員が良いというアイデアなんて、面白いはずがない

2019年労働基準法の改正により、大企業から順に余暇が増え、さらには公務員のNPOでの副業も解禁されている時代だ。単純作業のボランティアではなく、創造的な役割を打ち出し、彼らに活躍の場を与えることで解決できる地域課題は少なくないのではないだろうか。個人の創造力が十分に生かせる魅力的な仕事や、日本の未来に関わる良質な課題ならば、無償でもいやお金を払ってでも引き受ける人は今でも一定数存在し、今後ますます増えてくるだろう。


山徳平塚水産株式会社、平塚社長による水産加工業の課題をリサーチする参加者

②「 地方だから働き手が見つからない」は言い訳に過ぎない

今となっては当たり前の話だが、一次産業、特に水産業の人手不足が深刻である。

それでもなお、働き手が集まる人気企業はどの業界でも存在する。それも給料が良いから、福利厚生が…とかそんな理由ではない。

例えば今回OceanAcademyで協働した湊水産株式会社は、求人を出していないのにも関わらず求職者からの連絡が絶えず、ハローワークからも「求人はまだ出ませんか」と依頼される人気企業なのだ。

人が集まる企業の社長は皆、本人が熱いストーリーを語り、また実践者となって会社や地域を率いていた。

大地震と津波により電話も携帯もネットも全て遮断…
工場も事務所もパソコンもすべて海水に浸かりました。
会社の生命線とも言えるほど大きなウエイトを占めていた
30年間かけて積み上げてきた、大切な何万件ものお客様の注文データ。
何よりも大切なお客様から頂いたお手紙。
丁寧に包装し終え、発送を待つだけのたくさんの商品…

今まで一生懸命に蓄積してきた全てが、津波により失われました。
一瞬で変わり果てた工場の敷地内…
寒さと恐怖に震えながら、停電で真っ暗闇の中、みなとの避難したスタッフは
「これからどうなってしまうのだろう…」と意気消沈していました。

そんな中、
社長が言った信じられないひと言…

「電気と水道が復旧したら、また、たらこ作っぞ!」

一瞬耳を疑ったスタッフたち。
きっと誰もが「もう無理だ」と思っていたはずです。
しかし、その言葉を聞いた瞬間に「やるしかない」と全員思いました。
思えばあの日が、みなとの復興のはじまりでした。
停電で街の灯りがすべて消えたその夜は、
地上の目を背けたくなるような惨劇とは裏腹に、
見たことがないほどの、綺麗な満天の星空でした。

引用:湊水産 震災から5ヶ月 お伝えしたい大切なことがあります(2011年8月)

湊水産木村社長の人材にかける思いは相当なもので、女性の働きやすさを追求するあまり、身銭を切って保育園を併設してしまうほどだ。

元々、水産加工業の女性は子供ができたら休職/退職するのが当たり前な環境だったが、いかにして彼女たちが働き続けられる環境にするかを試行錯誤してきた結果、今や雇いきれないほどの人が集まる人気企業になり、昨夏にはその取り組みから安倍首相も訪問されている。

言うまでもないが、湊水産のたらこは、ストーリーも含めて本当にうまい。
サーモンではないが、いつも全力でオススメしている。
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賃金や地域に関係なく、社長のビジョンへの共感や生き様に心動かされる人は多い。

「僻地だから、低賃金だから人が来ない」ではなく、今一度自身と会社のビジョンを見直してみたらいかがだろうか。湊水産とは1年間一緒に過ごしてきたが「水産業には人が集まらない」なんて雰囲気は、微塵も感じなかった。むしろ私もいつかまたこんな水産会社で働いてみたいと思ったくらいである。

③ 大企業の若手は社外でリーダー経験を積め

「いや、まだまだ勉強中なので、私なんかがリーダーはちょっと…」
何かと理由をつけてリーダーを担わない人は多い。謙虚なのは非常に良いが、いつかリーダーになる一番の勉強は、今リーダーを経験することである。

むしろ会社内で今管理職やリーダーポジションでない人程、社外ではリーダーを担い、練習するべきなのではないだろうか。

主体的にチャレンジする人しか成長しない

OceanAcademyプログラムを通して、最も成長がみられた参加者の一人が弱冠25歳の女性である。

彼女のチームは大企業の役員クラスの方や皆一回り年上のメンバーだったが、彼女は最年少にも関わらず果敢にそのチームリーダーに立候補した。かといって、特別な水産の知見やプロジェクト推進能力を保有していたわけでもなければ、彼女の所属は民間企業の人事部だ。

しかし、これを成長の機会と捉えてチャレンジし、結果として、メンバーの協力のもと見事プログラムをまとめ上げ、非常に優秀なアウトプットを出していただいた。


OceanAcademy最終報告会で発表するM氏(25歳)

④ 地域の水産事業者は食料生産以外の生存方法を模索してもよい

「もうこれだけじゃ食っていけない…」
特に地域の事業者ではこのような声を聞くことが本当に多く、苦境に立たされている事業者は多い。しかし技術や文化の移ろいで消滅する仕事全てに国が補償していては、国の予算はいくらあっても足りないのだ。
「このままでは生活できないので、補助金をください」がまかり通る業界なんてハンコ業界くらいなものだ。

当たり前のことだが
“これ”だけじゃ食っていけないなら、”これ”以外も検討しなければならない

例えば、今回の OceanAcademyでは水産現場を、都市部人材の研修場として活用させて頂いたが、これが学びの現場として非常うまくハマった。

日本における多くの水産現場には旧態依然の業態も多く、都市部人材の能力(経営企画やマーケットインの商品開発等)が生かせる非常に実践的な学びの場になった。

地域水産業も変わり続けないといけない

例えば水産庁が推進する渚泊(なぎさはく)という取り組みをご存知だろうか

「渚泊」とは、漁村地域における滞在型旅行のことで、獲れたての新鮮な魚介類やそれを使った地元料理や、景色、日本伝統の漁業をはじめとした産業・文化に触れることができる、非常に魅力的な取り組みだ。
水産庁としても、都市と漁村地域の一層の交流を図るとともに、漁村地域の活性化を図るため全国における「渚泊」の取組を推進してる。

渚泊イメージ 漁村の魅力まるごと体験 美味しい×楽しい×美しい 背景画像:高知県大月町柏島

地方の水産現場は、国内の水産需要の低迷や担い手不足で苦境を強いられているが、食料生産以外の取り組みも、一度視点を変えて、見直してみてはいかがだろうか。

今回のOceanAcademy事業も水産庁や復興庁ではなくあえて経産省と組ませて頂いた。これまでの東北の水産業支援であれば、復興庁や水産庁の予算との連携が妥当なところだが、あえて経産省事業とすることで、また違った角度で数多くのヒントが得られたように思う。

「これまでやったことないから」「前例がないから」
という言い訳は平成に置いていこう。

潮の流れや時期によって漁場・獲物を変えなければならないことを我々は知っている。令和時代は、変われない地方や産業から間違いなく消滅していくだろう。

まとめ

と、とりあえず思いついたものを書きなぐってみたが、やはり真面目な記事を書くのは苦手!

しかし地域を支えるためにも、良い水産事業者には生き残ってほしいし、豊かな水産業を実現してほしい。そのために自分も前例にとらわれず、もっとチャレンジしていきたいなぁ….(お金ないけど!)

とまぁ個人的に水産関連で何かやっても金銭的な報酬はあまり(殆ど?)ないのが現状ですが、地域の水産業と関わっていると産地ならではのめちゃ旨い魚にめぐり合うので、まぁよきとしよう(何より生産者のストーリーを知っていると一層うまく感じる)

あ、ちなみに
「全日本サーモン協会の給料はいくらですか?」
という質問もたまに頂きますが

A. いくらではなく、サケです!

はい、そんな感じです(なんかすみません…)

ということで以上です!
今元号はもうちょい更新頻度あげます!
ここまで読んでいただきありがとうございマス(サケ)!

令和もがんばるぞー!!